つれつれ日誌

宇宙やITベンチャー、経済情勢、国内外社会、歴史、1歳半の息子育児、自身の不眠症、等々について徒然書いていきます。

【睡眠導入剤】デパスとの出会いと睡眠導入剤の種類・原理・期間・依存性&不安な時の使用について

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始めて使った睡眠導入剤

私が初めて使用した睡眠導入剤デパスでした。始めて行った睡眠外来で処方されたと記憶していますが、その際は0.5mgの白い錠剤だったような気がします。

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デパスはエチラームとも呼ばれ、有名なのでこの記事を読まれている人の中にはご存知の人も多いかと思います。今回は向学のためにも、この薬について、少し学術的に理解していきたいと思います。そのために、いつもは読み飛ばしている「デパス錠0.25mg/デパス錠0.5mg/デパス錠1mg」の取扱説明書も熟読してみました。(笑) 

まずは化学式。以下のような構成になるようですがこれは読み飛ばして下さい。(笑)

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デパスの効果

構造式なんかより、「実際にどれくらい効くのか?」の方が気になるかと思います。私も処方されたはいいものの、その当時はとにかく寝たいという気持ちで一心不乱でしたので、効果の有無がとても気になっていました。

以下は、二重盲検試験*1を含む1,608例について実施された臨床試験の結果を示しているものですが、睡眠障害においては95例中56例の方が「有効である」と回答しており、有効率はおよそ60%となっています。但し、これは「統合失調症における」の枕詞が付いており、睡眠障害のみを抱えている患者が対象にされているという訳ではないようです。

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あくまで私のケースですが、私は純粋な睡眠障害(精神生理性不眠症)ですので、実際デパスを飲むことで「寝れなかったらどうしよう?」という不安はなくなり気づかないうちに眠りに落ちることが出来ていました。

肌感では私のような不眠症のみが問題の場合、デパスの有効率は80%を超えていくのではないかと思います。仮に効かないと思った場合でも、それは有効成分の包含量が足りていない場合もあり得、例えば1㎎で効果が薄いと感じた場合には、1日の摂取限度は3㎎まであるので、主治医と相談しながら2〜3㎎までの範囲で、自分に合う量を調整してくのが良いかと思います。また、ピルカッターで錠剤を半分にし、0.5㎎錠を作ることも出来ます。

デパスの効果が出てくるまで

摂取してからどれくらいで効果が出てくるか、というのもまた気になる観点の1つかと思います。以下はデパス2㎎を食後30分後に摂取した場合の成分の血中濃度(厳密には「血漿中濃度」と言います。)*2を表しているグラフですが、約3時間後に血中濃度は最大になり、6時間経過するとその濃度は半減することが示されています。

私個人の体感では効果が感じられてから2時間もしないうちにほぼ0%になってる感覚だったので、半減期が6か月と知って意外でした・・。

 

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効果があることが実感できたので、それ以降私はデパスを愛用(?)するようになったのですが、私は様々な技術等の原理やメカニズムも知りたくなるタイプなので、「なぜ不安がなくなるのか?」について関心が高まっていきました。これについて書く前にまず、睡眠導入剤ベンゾジアゼピン(以下、「ベンゾ」。)とベンゾジアゼピン(以下、「非ベンゾ」。)に整理しておく必要があります。

睡眠導入剤の種類

専門家の方には「乱暴だ」とご指摘頂くかもしれませんが、睡眠導入剤について、以下のように整理してみました。ベンゾと非ベンゾ以外にも、以下の分類がありますが、ここでは省略化のため書いていません。

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私はベルソムラも服用しているのでその効用についてもいつか書いてみたいと思います!簡単な感想は「飲んでめちゃくちゃ効きまくることもあるが効かないことも多く、そのタイミングも即効のときと1時間程度かかることもある」となんとも扱いづらい薬という印象です(笑) たまに、効きすぎているのかと思うくらい心臓が静まることがあります。こんな症状が出てくる背景についても勉強したいところです。万物に通じますが、知れば知るほど知らないことが増え、勉強すべきことしかないことがわかります。(笑)

この睡眠導入剤の種類については、以下の病院の記事にとても丁寧に記載されており、非常に学ばせていただきました。こういった病院の先生に是非掛かりたいなと思いますね。

睡眠導入剤が効く原理

睡眠導入剤には大きく、ベンゾジアゼピン系のものと非ベンゾジアゼピン系の薬に分かれていることは前述した通りです。いずれもその作用原理は似ており、GABAの働きを強化し、神経細胞の活動を抑えてくれるんですね。このGABAですが、チョコ等で売られていることから聞かれたこともあるかと思いますが、正式な名称は「Y (Gamma) - aminobutyric acid」でして、朱書きの頭文字をとってGABAと一般的に呼ばれています。今回は出来るだけ学術的に理解することがテーマにあるので、専門的なHP等を漁りましたが、以下で委細な記述を見つけました。

 GABAとは、主に脳幹よりも吻側の中枢神経系の抑制性シナプス伝達を担うアミノ酸である。イオンチャネル型のGABAA受容体、GABAC受容体、ならびにGタンパク質共役型受容体であるGABAB受容体に作用することで、神経細胞の活動性を低下させる

やはりこれでは難しすぎてなんのこっちゃ分かりませんが、ポイントは赤字の「神経細胞の活動性を低下させるという点です。 

中枢神経系という神経系の中には興奮性の神経細胞の他に、その反対の神経細胞(つまり、興奮を抑制する抑制性神経細胞)が多く存在していて、大脳皮質においては神経細胞のうち20%程度が抑制性神経細胞で構成されていると言います。この大脳皮質に存在する抑制性神経細胞が重要な役割を果たしており、興奮性神経細胞からの信号出力具合を調整し、過剰な興奮を防いでいます

ベンゾ系と非ベンゾ系の違い

ベンゾも非ベンゾも、GABAに働きかけ、大脳辺縁系を中心とする情動中枢を選択的に抑制(覚醒中枢へ送られるインパルスを遮断)することで脳を落ち着かせ、睡眠にいざなっています。

GABAへの働き方に関して、ベンゾも非ベンゾのいずれもGABA受容体*3の「ベンゾジアゼピン結合部位」と呼ばれる箇所に作用しますが、当該部位はω1(中枢性)とω2(抹消性)*4というサブタイプに分かれており、それぞれのサブタイプは以下のような作用に関与すると考えられています。ベンゾはω1にもω2にも作用しますが非ベンゾはω1にしか作用しません。そのため、鎮静作用がほとんどで、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用は弱くなっているんですね。筋弛緩作用は「ふらつき」として副作用的に機能してしまうことがあるため、非ベンゾはベンゾの進化系で、より副作用の少ない薬と理解できます。(或いは、「より鎮静に特化した薬」とも解釈できます。) 

  • ω1:鎮静、催眠作用
  • ω2:筋弛緩作用・抗不安作用(認知、記憶、運動機能)

各導入剤の用量・ピーク時間・半減期

これも上述の病院HPでまとめらていた表を使わせて頂いているのですが、見やすく勉強になります。

私はこの中ではマイスリーデパス、ルネスタアモバンを使っていますが、確かにマイスリーが一番早く効く印象です。デパスは最近1㎎では全然効かなくなってきている気がします。そうプラシーボ的に思い込んでいるのか実際に耐性が付いてしまっているのかは分かりませんが・・。3㎎近く飲まないと安心できないことがある。。

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私は中・長時間型の導入剤を使用したことはないのですが、主な処方用途としては中途覚醒や熟睡障害への対処となります。高齢者の方で、睡眠につくことは出来るものの、途中で何度も目覚めてしまい、熟睡感を得られない、といった場合ですね。或るいは、起きたいと思う時間より早めに目覚めてしまう場合に、その時間まで効果が持続するような薬を飲むことで対策を図ります。

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私のような入眠が主な悩みの主因である場合には、超短時間型の導入剤を飲むことになりますが、その場合にはより依存症に注意する必要があります。依存症はそれ一つで大きなテーマになり得るので、別記事に起こしたいと思っています。

超短時間型と長時間型の効き方と依存性

下のグラフではX軸が経過時間でY軸が血中濃度を示してあります。赤字が超短時間型の薬を摂取した場合で、黒線が長時間型の薬を摂取した場合です。

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【引用】

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%BE%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%82%BC%E3%83%94%E3%83%B3%E7%B3%BB

見てお分かりの通り、超短時間型の薬は一度摂取すると一気に血中濃度が上昇し、効果を発揮します。一方でその半減期も早い(=効果が薄れていくスピードが早い)ので、「もう効果がなくなった」と処方量を超えて摂取してしまう危険性があります。

また、急激に効果が表れては消えるので、「飲んだらすぐ寝れる」という思い込みでその薬にかなり頼ってしまうことがあります。私はデパスマイスリーがすぐ効くので長期的に服用していましたが、ある時「こんなに薬を飲んでいても大丈夫だろうか」と、のっぴきらない不安を感じ始めました。その頃は薬のおかげで寝れてはいたので、デパス等と出会う前の夜の怖さや寝れなかった翌日への不安は割と薄れており、「今日は薬に頼らず寝てみよう」と出来るだけ睡眠を意識せずベッドに入りました。結果、いつもより寝にくさを感じ、かなりベッドで長らく悶々とすることになったのを覚えています。これは一種の離脱反応*5で、睡眠導入剤を長期的に服用することで現れる依存症の1つです。その他の依存性についてもまた詳述したいと思いますが、ベンゾも非ベンゾも正しく付き合っていけば依存症に陥ることは殆どないとの研究結果が出ていますし、私自身もう何年も導入剤を服用しておりますが、いつかは辞められると信じています。たまに減薬しても寝られる日はあります。そういった好事例からうまく行った理由やエッセンスを抽出して少しずつステップアップしていきたいです。

睡眠導入剤の強さ

こちらも睡眠導入剤を始めて飲む方にとってはとても気になる情報だと思います。私も自分が飲む薬が出来るだけ強くないと良いな・・と思っていました。強くない薬でも寝れているのであればまだ救いようがあるかなと言い聞かせられるので・・(・・;)

一般的には以下のような順序になるようですが、個人差はもちろんあると思います。私の場合、アモバンよりもマイスリーの方が効いている感じがありました。ハルシオンについては確かにダントツで強い気がします。飲んで20分程度ふらっと眠気に襲われ始めます。

睡眠導入剤の睡眠以外での活躍シーン

デパス等のベンゾはω2(抗不安)にも作用するため、抗不安剤としての性質も有しています。私はどちらかというとこちらの目的で服用することが多くなってきています。というのも、昔から緊張するのに人前でプレゼン等をすることへの憧れがあり、そういった機会を自ら設け、研鑽しようとするタイプ?でして、社会人となった今、不安に包まれることが多々あります。そういった「緊張するだろうな」とか「不安を感じそうだな」と予見できるイベントの1時間~30分前にデパス等を飲むと、いつもの自分で話せるのでとても重宝しています。

超短時間型の薬を1時間も前に服用するのには訳があって、「緊張しそうだな」と思い始めたときには既にある程度交感神経が高まり始めているんですね。そのためなのか、私の場合、超短時間型の薬を飲んでもすぐには効果が得られません。1時間くらいしてようやく「お、きたか?」といった感じです。これが万人に当てはまることなのかどうかは確信ないですが、早めに飲むことをお勧めします。

ベンゾの抗不安剤としての優位性はとても高く、以下の引用のように抗うつ薬よりも効果の確実性が高いようです。

ベンゾジアゼピンは時に急性不安の治療に用いられ、すぐに奏功しほとんどの患者の症状を緩和する[28]。しかし、耐性と依存症のリスクがあるため長期的な有効性はなく、2〜4週以上の使用は推奨されない。他の薬物療法と比較して、ベンゾジアゼピンでは中断時の症状の再発率が約2倍である。全般性不安障害の長期治療には、心理療法や他の薬物療法が推奨される。抗うつ薬はより高い寛解率を持ち、一般的に短期的にも長期的にも安全で有効である[28]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ベンゾジアゼピン 

少し長くなってしまったので今回はこの辺で一旦切っておきたいと思います。出来るだけ頻度上げて更新していきたいところ・・頑張ります(^^)

 

*1:二重盲検法(にじゅうもうけんほう、英: Double blind test)とは、特に医学の試験・研究で、実施している薬や治療法などの性質を、医師(観察者)からも患者からも不明にして行う方法である。 プラセボ効果や観察者バイアスの影響を防ぐ意味がある。

*2:血液中の薬物濃度は、血球中薬物濃度、血漿中薬物濃度に区分される。多くの薬物では全血液中の薬物濃度の測定は技術的に困難であり、血漿中薬物濃度あるいは血清中薬物濃度を測定し、血中薬物濃度としている。血球中薬物濃度が高く無視できない場合には、全血中の薬物濃度を測定する。

【引用元】https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?血中薬物濃度

*3:受容体(receptor)とは、生物の体にある外界や体内からの何らかの刺激を受け取る構造のことです。目や耳などの外界の情報を得る器官のことや、それらの器官の構成成分である受容細胞のこと、さらには刺激を受け取る分子やタンパク質のことのも受容体と呼ぶことがあります。生化学では、神経伝達物質やホルモンを受け取る細胞内に存在するタンパク質のことをおもに指します。

*4:同じく抹消性の「ω3」もあります。

*5:医薬品や娯楽的な薬物のように依存を形成する薬物を減量あるいは断薬することによって一連の症状を生じること